浦和すずのきクリニックの鈴木です。
突然、心臓がドキドキして息が苦しくなる。
頭が真っ白になり、まるでこのまま倒れてしまうんじゃないかと思うような恐怖が押し寄せる…。
これは、パニック発作を経験した人ならよく知っている感覚です。
一度発作を起こすと次はいつ来るのかと不安が付きまとい、普通の生活が難しくなることも。
しかし、パニック発作には適切な対処法があることを知っていますか?
この記事ではパニック発作を和らげるための具体的な方法をお伝えします。
これを知っているだけで、次に不安を感じた時に上手に対処できるようになるでしょう。
パニック発作は突然の激しい恐怖や不安感がピークに達し、身体的・精神的な症状が同時に発生するものとされています
この発作は、特定の状況や脅威がない場合でも突然起こることがあり、以下の症状のうち少なくとも「4つ」が「数分以内」に現れる必要があります。
- 動悸、心拍の上昇、または心臓が飛び出るような感覚
- 発汗
- 震え、または体の震動感
- 息切れ感、または窒息感
- 息苦しさ、または喉が詰まる感じ
- 胸の痛み、または圧迫感
- 吐き気、または腹部の不快感
- めまい、ふらつき、または気を失いそうな感じ
- 寒気、またはホットフラッシュ(体温の急上昇感)
- 感覚異常(手足のしびれやチクチク感)
- 現実感の喪失、または自分が自分でない感覚
- コントロールを失う恐怖、または気が狂ってしまうのではないかという恐怖
- 死への恐怖
4つ以下の場合は「症状限定性発作」と呼ばれています。
発作が起こること自体に対する不安(予期不安)や、発作を避けようとする行動(回避行動)もよく見られます。
パニック発作は他の疾患や薬の副作用によるものではなく、身体に実際の危険がない状況でも発生することがポイントです。
またパニック症だけでなく、うつ病などその他の精神疾患や、医学的な病気でも起こります。
次にパニック発作への代表的な対処法を3つ紹介します。
パニック発作が起こると呼吸が早くなり、過呼吸のようになります。
そうすると不安や目まい、しびれの症状がでやすいです。
そこで呼吸をととのえることで、症状を軽くすることができます。
また、パニック発作が起こると不安や恐怖が頭を支配しやすくなりますが、「吸う」「吐く」という行為に集中することで、頭の中の不安に意識が向きにくくなります。
このようにして身体と心を同時に落ち着けることが可能です。
呼吸法にも様々なやり方があります。
・3秒吸って3秒吐く
・4秒吸って、4秒止めて、8秒吐く
・軽く息を吸って、息を止め、できるだけ細く長く息を吐くようにする
などあり、やりやすいものをやりましょう。
個人的には吸うよりも吐く方を長くする方法がおすすめです。
よく深呼吸をしてたくさん息を吸おうとすることを意識する人がいますが、あまりお勧めできません。
特に過呼吸に気味になっている人は、息をたくさん吸おうとしてしまい悪化しやすいです。
呼吸法は不安時でいきなりやるのではなく、普段から練習するようにしてください。
そうしないとあまり役に立ちにくいでしょう。
一日3回~4回、5分でよいので毎日やるようにしましょう。
注意トレーニングは、不安や身体に対して過度に意識を集中させる代わりに、他の対象に向ける練習です。
パニック発作が起こると「倒れてしまうでは」などの不安な考えや、動悸や目まいなどの体の感覚、つまり「自分」に過度に注意が向いています。
自分に注意が向きすぎるとさらに不安が強くなりやすいのです。
このため注意を自分ではなく「外部」のものにシフトしバランスがとれてくると少しずつ楽になりやすくなります。
「外部」というのは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など外から感じられるものです。
普段は集中しないと見過ごしてしまう、細かいところを五感から感じ取ってみましょう。
練習方法
最初は不安場面以外で練習をしましょう。
①「自分」に意識を向けます。
動悸、息苦しさ、など体の感覚に注意を向けてみましょう。
②五感に注意を向ける
①で「自分」に注意を向けた状態から以下のように五感に注意を向けます。
視覚
部屋の中にあるあらゆるものを見てください。色、濃淡、模様、形など。
人なら髪形、色、肌、洋服、アクセサリー、一重か二重かなど、それぞれ観察しましょう。
実況中継するような感じです。
他の感覚も同じようにしてみましょう。
聴覚
聞こえてくるものに意識を向けてください。
目を閉じてもよいでしょう。
時計、エアコン、外の声、音など。
音楽を聴いているなら、それぞれの楽器の音に意識を向けるのもよいでしょう。
嗅覚
どんな匂いかを観察します。
食べ物、飲み物、周りの匂い、家具の匂いなど。
味覚
食べたり飲んだりした時の味を観察しましょう。
食レポをするイメージをするといいかもしれません。
触覚
身体が接しているものの感覚に注意をむけます。
座っているもの、着ている服、時計、足の感覚など。
③再度①~②を繰り返す
①~③が出来るようになったら、不安場面で注意トレーニングをするようにしましょう。
一日一回以上練習しましょう。
注意点として、注意を外に向けて動悸から注意を完璧にそらそうとする方法ではないということです。
注意を自分と外にバランスよく向けていけるとよいでしょう。
突然心拍が速くなったり、呼吸が苦しくなったり、冷や汗が出たりといった激しい身体反応が現れると、多くの人はその場から逃げ出したくなる衝動に駆られるもの。
しかし、避け続けることが逆にパニック症状を強化し「発作が起こったら逃げるべき」と脳が学習してしまうのです。
そもそもパニック発作自体は危険なものではなく、何もしなくても自然に収まるのです。
このため「発作が起こっても逃げずに良いし、何かしていれば自然に収まる」という体験をすることで、パニック発作への不安を軽くしていくことができます。
例えば、買い物中に発作が起こった場合。
突然、心臓がバクバクし、周りの視線が気になり、頭が真っ白になるかもしれません。
通常なら「家に帰りたい」と思う場面です。
しかし、ここで逃げずにそのまま買い物を続けることが重要です。
発作があっても、自分に必要な商品をカゴに入れ、レジまで進み、支払いを済ませて帰ることができる。
この経験ができれば「発作が起きても、買い物を続けられる」といった成功体験が積み重なり、不安が薄れていきます。
注意トレーニングをここで使ってみるのもよいでしょう。
「早く買い物してこの場から立ち去りたい」という考えや動悸に注意を向けるのではなく、目の前の商品は何か、店ではどんな音が聞こえるか、周りにはどんな人がいるのかなど注意を向けながら買い物をしてみるとよいでしょう。
以上、パニック発作への3つの対応について説明しました。
どの方法も練習が必要で、すぐにうまくいかないことも多いかもしれません。
しかし、練習を継続することで少しずつパニック発作への対応が上達することでしょう。
地道に練習してください。
もしも、うまくいかない時はカウンセリングで相談してください。