浦和すずのきクリニックの鈴木です。
パニック症の人で車の運転が怖い人が多いです。
運転しなくても、乗るのが怖いという人もいるでしょう。
パニック症の人が車に乗ることを克服するメリットは大きいです。
車が必須の地域の人なら生活の質が格段に上がります。
車が必要のない地域の人でも、車について克服することは電車など他の移動手段が怖いことにもよい影響を及ぼす可能性があります。
今回はパニック症で車に乗ることが怖い場合の克服法について説明します。
車に限らず電車や飛行機など怖い人にとっても参考になるかと思います。
車の運転を克服するためにはなぜ車への不安が続いているかを理解する必要があります。
パニック症の人は車に乗っている時に動悸や息苦しさを感じ「発作が起きたらどうしよう」となります。
発作によって「気が狂うのでは」「危険な運転をしてしまい事故になるのでは」と考えやすいでしょう。
そうすると高速道路など逃げらない状況を避けたり、運転の運転自体をやらなくなったりします。
苦手な場面を回避することを「回避行動」と言います。
回避行動で安心はしますが、当然怖さは克服されません。
車で逃げられない状況=危険な場所、とインプットされてしまいます。
このようにして車の運転が怖い状況が維持されていくのです。
克服方法の一つは、まずパニック発作に関して間違った考え方をしていないかチェックすることです。
パニック発作が起こると「窒息してしまうのでは」「気を失ってしまうでは」「ほっといたら大変なことになるのでは」と考えるかもしれません。
しかし、実際のところそのようにはなりません。
「気を失ってしまう感覚がある」のと「気を失ってしまう」は別なのです。
パニック発作は不安場面から逃げ出さなくてもそのままにしておけば時間とともに収まってくることを知っておくことは重要です。
窒息することも、気を失うことも、永遠に不安が上がり続けることもありません。
パニック発作は不快ですが、危険なものではないのです。
もしあなたがパニック発作で最悪のことが起こりそうと考えているなら、本当にそうなのかをチェックしてみてください。
「パニック発作が起こっても気を失わないんだ。じゃぁ車に乗っても大丈夫だよね」と思える人はまずいません。
不安は頭では納得させようとしても難しいものなのです。
このため頭ではなく体で「車に乗っても何とかなるよね」と理解する必要があります。
つまり実際に車に乗って怖い場面で試してみるのです。
その手順について説明します。
下記の方法はあくまでのも一つのやり方で絶対的なものではないのでご了承ください。
まずは車の運転で苦手な状況を考えてみてください。
なかなか思い浮かばない人は上述した回避行動を考えてみるとよいでしょう。
例
・高速道路
・渋滞
・トンネル
・長い橋
・長距離の運転
・知らない場所
・雨や夜の運転
・一人での運転
回避場面の中からチャンレンジするものを選び、車の運転をして恐れている結果となるのか?実際どうなるのかを確かめてみましょう。
無難なのは難易度の低いところからチャンレジすること。
例えば渋滞は怖いけれど、空いている道ならチャンレジできそうというならそこからやるとか。
ただ怖いと思っていないところをやってもあまり意味がありません。
怖いと感じて避けていることをやり、少しずつ難易度をあげてください。
例
空いている道を誰かと一緒に運転
→空いている道を一人で運転
→混雑している道を運転
もちろん、難易度が高いところもやっても構いません。
難易度が高い=危険度が高い、というわけではないので。
むしろ、難易度が低いところや高いところを混ぜた方が効果的とも言われています。
運転時間は短かすぎてはいけません。
短い時間不安にさらされると不安が強い状態で終わり、不安な記憶だけが残りやすくなります。
一方で長い時間不安にさらされることで、不安が収まってくることが体験しやすくなります。
ケースバイケースですが、最低15分くらいはと言われていますが、できるだけ長い時間の方が望ましいことが多いです。
この辺りのことはこちらの記事も参考にしてください。
https://www.heartcompany.co.jp/urawasinri/2022/06/14/panic/
実際に運転しようとすると不安が思い浮かぶでしょう。
あなたの最悪のストーリーを考えてみてください。
例えば「運転したら気を失ってしまう」と不安に思う場合。
実際にどれくらい運転したら気を失うのか?予測してみましょう。
5分くらいで気を失うというなら、15分くらいは運転して実験して予測があたるかを試すとよいです。
「運転をやめないと不安は永遠に収まらない」と予測するなら、本当に収まらないかを実験してみましょう。
この場合は30~1時間くらい時間をとった方がよいかもしれません。
このように不安な考えがあった時の対応は、それが本当に起こるのか、不安に耐えられないというなら本当に耐えられないのか、を試してみるよい機会ととらえて実際にやってみることです。
多くの場合、最悪な予想が覆される結果となります。
一度だけでなく、何度も経験することでパニックへの不安が低下しやすくなります。
結果的に車の運転に対する怖さがなくなってくるのです。
気をつけてほしいのは「動悸や息苦しさが出てきたら運転を中止すればよい」というもの。
それだと「動悸や息苦しさ=危険な兆候」という考えのままになり、いつまで経ってもパニックへの不安はなくなりません。
先述のように動悸や息苦しさは「気を失う」など危険のサインではありません。
危険ではないものを危険と判断して車を回避しているのが問題なのです。
「動悸や息苦しさがあっても気を失うことはない」ことを実験するとよいでしょう。
もう一つ、気をつけなければいけないのは「安全行動」と言われているものです。
車に乗る上で安心するためにやっている行動で、一時的な安心があり車に乗る上での手助けになるのですが、それをやっていると長期的には不安を克服できない要因となります。
例
・水、スマートフォンなど手元に置く
・事前の頓服使用
・法定速度よりかなりゆっくりしたスピードで運転
・不安を感じたら停車
・サービスエリアなど何かあったときに停車できる道を選ぶ
・過度に事前に目的地までの道のりを調べ安全かどうかシミュレーションをする
不安を感じた時のために停車できそうな場所ばかりにいくと、停車できない場所が怖いままになりますよね。
怖いところを残しておくと、車にある程度乗れるようになっても不安が克服されない状況が続きます。
一時的な安心は長期的な不安のもとになるのです。
もし安全行動をしているなら、少しずつやめるようにしてみてください。
安全行動への詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
https://www.heartcompany.co.jp/urawasinri/2023/04/21/post-5542/
上記の方法を実践することでパニック症の人でも車の運転を出来るようになった人はたくさんいます。
不安に向き合うことになるため簡単ではありませんが、やり通すことで格段に日常生活の質が上がってきます。
車だけでなく電車など他の乗り物にもよい影響を及ぼすと予想されため、是非悩んでいる方は練習してもらえればと思います。
自分の場合はどうしたらよいのか?一人ではどうしてよいのかわからないという方はカウンセリングでご相談ください。