吐く不安を解消!嘔吐恐怖症の2つの治し方とコツ


浦和すずのきクリニックの鈴木です。


吐くこと、吐いている人を見るのが怖い。

よく嘔吐恐怖症といわれます。

※DSMー5という診断基準では限局性恐怖症の一つ


嘔吐関係のことを恐れて日常生活に支障をきたします。

純粋な嘔吐恐怖症でなくても、パニック症、強迫症、社交不安症などでも嘔吐関係で悩みがでてきやすいです。

しかし、あまり知られていないと言われていて悩んでいても「吐くのは誰も怖いよね」と病気だと思われないことも多いのです。



そこで今回は、嘔吐恐怖症など「吐く」ことに関して困っている症状の特徴と改善方法について説明します。

悩んでいる人は参考にしてください。


嘔吐恐怖症で困りやすいこと



嘔吐恐怖症の人は吐くことが不安でこのようなことで困りやすいです


・吐きそうな物を食べられない

例 肉類、酒など



・吐いている人がいそうな場所を避ける

例 居酒屋、週末夜の電車



・吐くと困るところを避ける

例 他人との食事、電車、車


・吐くような病気を恐れて予防しようとする

例 手洗いや消毒を過度にする、ノロウィルスなど吐き気につながるような病気と関連している食べ物を避ける(カキなど)



・妊娠を避ける


以上のように嘔吐に関することを避けるため日常生活が制限されます。

自分が送りたい生活ができずストレスがたまります。

また不安は避けると怖くなるという性質があります。

嘔吐に関する状況を避ける

不安が強くなる

さらに嘔吐に関する状況を避ける

という悪循環にはまり抜け出せなくなります。



2つの改善方法


ここでは認知行動療法で行われている改善方法の一部ですが2つご紹介します。

① 吐くかどうかを実験する

特に嘔吐するのではないか?と不安な人に有効な方法です。

嘔吐恐怖は嘔吐を過度に恐れている状態です。

少しでも体に違和感があると「吐くのではないか」と不安になるでしょう。

しかし、その不安は脳の誤作動といわれています。

恐れる必要のないものを「危険だから逃げろ」という信号を出していると思ってください。

改善のためには「脳の誤作動だから恐れる必要はないよー」ってことを理解していくことが必要です。


脳の誤作動だと理解するには実際に不安なことをやってみて体験するとよいのです。

その方法をご紹介します。

あなたが嘔吐が不安で食べられないものがいろいろとあるとします。

肉、酒、ラーメン、などリストアップしてみましょう。
ラーメンでもさっぱりの塩ラーメンかこってりの豚骨ラーメンかで不安に差があると思うで少し細かく考えてみてください。


その中から不安の弱いものを選んでください。

例 塩ラーメンを食べる


そして食べたら最悪どうなるのか?吐くのか?その確率を0(絶対吐かない)~100(絶対吐く)で予想してください。
例 気持ち悪くなって吐く 90%

その後実際に食べて吐くかどうか実験してどうなったかを観察してください。

例 気持ち悪い感覚があったが吐くことはなかった



実験してみた後にどう思ったか?疑問点があれば次に実験してみること、予想した吐く確率が今どのような数値になっているかを振り返るとよいです。

例 さっぱりしたラーメンだったから吐かなかったかも。次は味噌ラーメンでためしてみよう 50%

何度も実験してみることで嘔吐への不安が少なくなってきます。



②嘔吐場面に慣れる


特に嘔吐するのを見たり、そのような場面に行ったりするのが苦手な人に役に立ちやすいです。


先述したように不安は避ければ避けるほど怖くなる性質があります。

とっても不安に敏感な状態です。

ということは、鈍感にしていけばよいのです。


鈍感にしていくにはあえて不安な状況に直面して慣れる、という方法をとります。

ジェットコースターが苦手な人がジェットコースターを何度も乗っていたら平気になってきますよね。

その原理と似たような感じで嘔吐にも利用します。



例として吐いている人を見るのが怖くて避けている場合。

いきなり吐いている人を見て慣れろ!居酒屋に行け!と言われてもきついですよね。


そんな時は難易度を下げて練習します。
難易度の下げ方としてはこんな感じです。

・「吐く」という文字を見る、書く

・吐いている人のイラストを見る

・吐いている音を聞く

・吐いている人の想像をする

・吐いている人の映像を見る


これらの刺激はネットなどでいくらでも手に入ります。

一つのことをそれほど不安に感じなくなってきたなーというところまでやりましょう。

どれくらいの時間をやればよいのか?ですが、チャンレンジするものにもよりますが、10~20分くらいは最低でもかかりやすいでしょう。

場合によっては1~2時間くらい必要なことも。
途中で止めたり、十分な時間をかけなかったりすると怖さが増すので注意してください。

これを何度も繰り返すと不安を感じにくくなってきます。


この辺りが出来るようであれば、電車、居酒屋など避けている状況に同じようなやり方でチャレンジしてみるとよいです。

何度もやるうちに不安に慣れてきます。


ただし実際に不安な場面に行った時にはコツが必要ですので、コツを紹介します。


不安な時の意識のコツ


苦手な場面に行ってひたすら吐き気や不安を我慢して時間が過ぎるのを待つ、みたいなことをやってもなかなか改善は難しいです。

ではどうすればよいか?

不安になっている時は、吐きそうになる体の感覚に意識が向いて「吐いたらどうしよう」となりませんか?

体に意識が向きすぎるとどんどん怖くなるのです。

そこで意識を体ではなく、体の外に向けていくと良いのです。

外の刺激を感じ取る、みたいなイメージです。

やり方は五感に意識を向け

・何を感じているか?

・今やっていること

に意識し続けます。

ただ意識するだけでなく、かなり意識しないと感じ取れないものを感じようと思ってやることがポイント。

例 コーヒーを飲みにいった時


視覚→何が見えるか?

コーヒーの色、テーブル、椅子、人など見ましょう。

人なら髪形、しわ、化粧、服の色などじっくり観察します。


聴覚→何が見えるか?

音楽、話し声、空調、作業している音など聞こえているものを感じ取ります。



嗅覚・味覚→どんな匂い?味?

コーヒーの味、匂い、をゆっくりと感じ取りましょう


触覚→どんな感覚?

座っている椅子の感覚、コーヒーカップの感覚など、皮膚で触れているところに意識を向けましょう。


こんな感じで五感を使い、細かく観察してみてください。

意識が外にいくので何もせずにじぃーとしている時よりは、マシに過ごしやすくなります。

不安な場面でいきなりやるのではなくて、最初は家の中など不安でない場面で練習をしましょう。

練習は一日2~3回、5分でもよいのでやっておくと不安場面でも役に立ちやすいです。


注意点

よくある誤解なのですが、これは不安なことから「気をそらす」練習ではないです。

やっているうちに気がそれることはありますが、気をそらすことが目的ではありません。

「嫌な感覚もあるし、それ以外の感覚もあるよね」みたいな不快な感覚や考えに意識が向きすぎているのを柔軟にしていく練習だと思ってください。


この練習をすることで不安がマシになりやすいことの他に、今やっていることに意識が向きやすくなります。

嘔吐のことだけ考えていたのが、人との会話、食事、電車で起こっていることなどにも意識が向けられ新しい体験が得られやすいのです。



まとめ


今回紹介した方法を粘り強く練習・実践していくことで、少しずつですが嘔吐に振り回されない生活に近づいてきます。

仮に今は怖くてできないと思っていても、こういう方法で改善するのだという知識をもつことで、やる気になった時に治療の選択肢として思い出せます。

なかなか実践してもうまくいかない、細かいところがわからない、という方はご相談にいらしてください。


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