浦和すずのきクリニックの鈴木です。
パニック症(パニック障害)の人は不安になった時の対処法は重要です。
対処法によって改善したり悪化したりします。
電車など苦手な場面で不安になった時に書籍やインターネットにのっている対処法をやっている。
しかしなかなか電車での不安が改善されない、改善されたとしても再発を繰り返す方はいませんか?
実はパニック症の人にあまり知られていない、やってはいけない対処方法があるのです。
しかもちょっと役に立ったような気がするからやってしまい、そこからなかなか抜け出せなくなっているためわかりにくいもの。
個人的な感覚ではパニック症の9割くらいの人が知らない印象です。
そこで今回はパニック症の人がやってしまうと改善を邪魔してしまう5つの対処法について説明します。
この記事に書いてあることを見直して実践することでパニック症の克服に一歩近づくはずです。
やってはいけない対処法とは安全行動(安全確保行動)というものです。
一時的に安心効果がありやるのですが次第にやらないとダメになり、不安感が継続しやすくなる行動のことです。
いろいろとありますが、5つの分類にまとめてみました。
①安心グッズを持ち歩く
外出する時に頓服薬、水、ガムやフリスクなど清涼菓子、携帯電話を持ち歩いていませんか?
発作が起こったら困るからお守り代わりの頓服薬って人が多いでしょう。
携帯電話は不安になった時に誰かに連絡がつかないと不安だから。
これらのものを忘れたことがわかると不安なり、持ち歩かないと外出できない人もいます。
②座ったり、寄りかかったり、横になったりする
動悸など症状があると、椅子に座ったり横になったり姿勢を変えていませんか?
電車などで椅子に座れないと不安だから、座れないような状況を避けます。
③逃げ道を探す
電車や映画館などで不安になったらいつでも逃げだせるように出口を探していませんか?
電車ならドアの前、映画館なら出口近くにいて真ん中ですぐに逃げ出せない状況を避けようとします。
人によっては事前に出口の場所など入念に調べることも。
④過度に気をそらす
電車に乗っている時に一生懸命携帯電話を見て気を紛らわそう、広告や景色をみて気をそらそうとしていませんか?
だいたいうまくいっていないのではありませんか?
携帯電話など気を紛らせるグッズがないと電車に乗れないという人もいます。
⑤呼吸法、深呼吸など呼吸を変える
いろんな情報をみて呼吸を変えることをしている人がいるのではありませんか?
呼吸法をやってはいるけれど、余計息苦しくて意識が向いてしまうという人もいます。
過呼吸っぽい時に酸素をたくさんとりこもうとして深呼吸をすると逆効果になりますのでご注意ください。
以上の5つの安全行動を見てこのように疑問に思った方はいませんか?
「これってパニック症の本にもやった方がよいって書いてたし、専門家にもやれって言われたよ」
「実際に効果があって、やってよかったよ」
そうなのです。
やりましょうと専門書にも書かれているし、専門家の人もすすめているし、パニックがよくなったよって人もいます。
呼吸法や気を紛らわす方法なんかは特にそうですよね。
一方で、これら5つのことが不安の改善を邪魔してしまう可能性があることも専門書には書かれていて、認知行動療法やっている専門家の方なら教えてくれるはずです。
ただインターネットで得られる情報や書籍では安全行動まで触れられているものが少ないため、あまり知られていないのです。
ではなぜ安全行動はやることをすすめられることもあれば、やってはいけないとも言われるのかを説明します。
例えば電車に乗るのが不安な人が水を少し飲めばスッキリして安心できるから、電車に乗るときは水を持ち歩くようになったとします。
これまで不安で電車に乗れなかったのが、水を持ち歩くことで乗れるようになったことはとても良いことです。
効果があったといってよいでしょう。
安心させることで不安なことにチャレンジできるようになりやすいです。
安全行動がすすめられる理由ですね。
ところが水を忘れてしまった、水が飲めない状況になったらどうなるでしょうか?
おそらく不安になり「水がなかったら対処できない、最悪のことが怒ってしまう」と考えてしまいます。
また「水を持ち歩くけれど飲まなければOKですか」と質問ありますがこれも同じです。
使わないつもりだけど「お守り代わり」で使おうすれば使える状態にしておくと「いざという時にお守りがなかったらダメかも」と考えてしまいます。
本来、パニック症の症状は何もしなくても収まります。
不快ではありますが危険なものではありません。
パニック症を改善させるためには動悸や息苦しさなど症状がおこっても最悪のことにはならないことを学ぶことが重要。
しかし、水を飲むことやお守り代わりにすることは、このことを学ぶことができなくなってしまうのです。
このためいつまで経ってもパニックへの不安は残ったままになります。
電車など何度も苦手なことにチャレンジしているのに慣れない、パニックを克服したと思っていたけれどまたダメになっている、という人は安全行動をしている人が多いです。
このため安全行動をやらないでも大丈夫と学ぶ必要があります。
では安全行動は絶対やるとダメなのか?というとそうではありません。
水や頓服を持ち歩いたり、呼吸法をすることでやれなかったことがやれるようになるのであれば改善への一歩となります。
映画館で出口の近くに座れれば映画を見れて、携帯で気を紛らわしたり椅子に座れれば安心したりして外出できるのであれば怖くてどこにもいけない状態より生活の質が上がって気分も改善しやすくなります。
しかし「安全行動をやらないとダメ」となると後から問題になります。
どこかで止めていかなくてはいけません。
安全行動は泳ぐのが怖い人にとっての浮き輪のようなもの。
まず水に慣れるために浮き輪をつけますよね。
浮き輪で泳げるようになったら、少しずつ浮き輪をはずして練習して最終的に浮き輪なし泳げるようになります。
浮き輪がなかったらダメとなるといつまでも泳げるようにはならないし、怖い気持ちも克服できません。
要するに安全行動は苦手な状況にチャレンジするときの補助としてやるのは有効であるけれど、どこかで止めていかないと不安が改善されない理由の一つになってしまいます。
自分が今どれくらいの回復段階かを見極めた上で安全行動をやるかやらないかを決め、最終的には少しずつ安全行動をやらない練習をしましょう。
安全行動は使い方により役にも立つし、不安が改善しない原因の一つにもなります。
書籍やネットはもちろん医療機関であっても安全行動のメリットを教えてくれても、デメリットを教えてくれるところは少ないです。
パニック症の人は自ら学んでいく必要があります。
もちろん「安全行動をしていて困らないからこのままでよい」というのならそれでもよいでしょう。
それで一生困らない人もいます。
しかし、安全行動をしているためなかなか改善しないでいる人にとっては、次の改善ステップにすすむためのヒントとなるはずです。
自分にとっての安全行動が何かがわからない、どのようなステップで安全行動をやめていったらよいかわからない、という方はカウンセリングでご相談ください。