浦和すずのきクリニック、臨床心理士の鈴木です。
強迫性障害の種類に疫病恐怖があります。
HIVや肝炎など、ウィルスや細菌感染を怖がり、手洗いや入浴が長くなったり、不安に思ったものが触れなくなったりします。
克服法は薬か認知行動療法しかありません。
研究によると認知行動療法が一番効果があります。
ところが認知行動療法をやっている専門機関は少なく、薬や効果のないカウンセリング・民間療法を続け、何年も経過してしまっていることがあります。
このページでは疫病恐怖で悩んでいる人がどのようにしていけば克服できるか、認知行動療法の理論に基づいて説明します。
疫病恐怖は治し方を間違えず、実行すればかなりの割合でよくなります。
早い人は1~2ヶ月で良くなる人もいますよー。
まず、なぜ不安が強くなっているかをHIVを例に説明します。
HIVを自分の怖いウィルスや細菌、病気に置き換えてください。
ニュースやネットでHIVについて知識を得たことをきっかけに、不安になった人が多いでしょう。
最初は、なんとなーく「怖いなぁ」程度で思っていたのが、だんだん血液を見ると「HIVに感染するのでは」と怖くなってきた。
そのうち、赤いものを見ただけで、「血では」と思い、確認したり手を洗うようになってきます。
手すりや病院など感染しそうだと思った場所は苦手になり、帰宅すると手洗いや入浴を頻繁にするように。
除菌スプレー、塩素系洗剤を使って、肌はボロボロ。
ボロボロの肌からウィルスが感染しそうで恐怖が増大。
さらに赤いのものだけでなく、便、尿、食器、性行為が怖くなり、どんどん不安の範囲が広まり、生活に支障をきたします。
保健所でHIVの検査をやっても「あの検査結果は間違いかもしれない」と不安になり、何回もやってしまう。
このように、連想が膨らみ、不安を避けるなどHIVの感染予防を過度にすることによって、悪化していきます。
要するに避けるから病気がひどくなるのです。
HIVに感染したかどうかに敏感になっているのが病気。
このため「HIVに感染したのではないか?」という不安に慣らしていくことで克服できます。
やっていくうちに不安があっても流せるようになるか、気にならなくなるでしょう。
では、不安に慣らすためにどうすればよのか?
以下の3つのことをやります。
① 触るのを避けていたものに触る
② ①を触った後キレイにしておきたい場所、人、モノに広げる
③ 手を洗うなど安心する行為はしない
これら3つのどれが欠けても克服はできません。
例えば、③のいくら手洗いを短くしようとしても、①の怖いものに触らなければ治ることはないでしょう。
実践するには、まず①と②にあてはまるものは何かをリストアップします。
①の例
・手すり
・道に落ちている赤いもの
・病院
・トイレ
・トレイの汚物入れ
・赤いしみ
・手が荒れている人
・他人の使った食器
②の例
・自分の体
・自分の体で傷があるところ
・ベッド
・スマホ
・家族
・洋服
③についても不安でやってしまっているものをリストアップしましょう。
・手を洗う
・入浴をする
・除菌スプレーを使う
・アルコール消毒をする
・専門家に感染していないかを確認する
・ネットで感染しているかどうかを調べる
・頭の中で「大丈夫」と言い聞かせる
ここでのポイントは「自分にとって何が怖いか?」の把握です。
「自分に感染してしまう」ことが怖いのか「他人に感染させてしまう」のが怖いのか、もしくはそのどちらもなのか。
上記の例はあくまでも参考ですのでご注意ください。
リストアップしたら①に触り、②に広げ、③をしない、を繰り返します。
例
①ドアノブに触り、②自分の体やスマホにそのまま触り、③手を洗わないで過ごす
最初は不安の弱いところからやっていくと良いです。
覚悟が出来ないまま高いハードルを越えようとすると、もっと怖くなります。
慣れてきたら「血がついていて怖いもの」を肌に貼るとか、持って歩くとかすると①~③の全てが一気にやれます。
注意点として、絶対に③をやってはいけません。
よくあるのは入浴前にだけ挑戦する、ってこと。
「後で洗えるから大丈夫」と考えてやってもダメです。
あと「手洗いを短くしよう」ってのもほとんどうまくいきません。
③をしないことを徹底しましょう。
やっても良くならない時は以下をチェックしてください。
・練習の回数が少なくないか?(一日に何回もやっているか?)
・逃げながらやっていないか?(「大丈夫」と思いながらやっていないか?)
・①~③のどれかを外していないか?
・強い不安を避けていないか?
・そもそも恐怖の対象を間違っていないか?(これは、専門家に相談した方が良いです)
以上のことを繰り返し実践していくことで良くなります。
最初は苦痛でしょうが、やっていくうちに平気になります。
一人でも克服可能ですが継続して練習していくのが難しいでしょう。
カウンセラーと一緒にやることでやり方を間違えず、治療を続けやすくなるので、自信のない方はご相談に来てくださいね。
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