浦和すずのきクリニックの鈴木です。
予期不安という言葉を知っていますか?
・パニック発作が起こったらどうしよう
・人前で緊張して恥をかいたらどうしよう
・眠れなかったらどうしよう
・不安で○○が台無しになったらどうしよう
このように「不安に思っていることが本当に起こったらどうしよう」と不安になるのを「予期不安」といいます。
パニック症や強迫症、うつ病など様々な心の病気で出てきます。
ところが予期不安への対処方法については知らない人が多いでしょう。
そこで今回は予期不安への対応については説明します。
自分でできる対応方法を知っておくことで予期不安が軽くなるでしょう。
まず予期不安によって起こることを知っておきましょう。
例えば大勢の前で発表することに緊張して困っている人がいたとしましょう。
「1週間後、人前で話さなきゃいけない。緊張して恥をかいたらどうしよう」
と考えます。
するとそのことで頭がいっぱいになり、一週間前から緊張して悩みだすことでしょう。
時間が経つ連れて人前で話すことが怖くなり、その場を回避してしまう人も出てきます。
回避をすると一時的に安心しますが、不安が強くなる性質があります。
このため次に人前で話す機会が出てくると予期不安がもっと強くなるのです。
このように予期不安によって苦手な場所を回避し、さらに事態が悪化する経過をたどりやすいのです。
予期不安はどうして強くなるのでしょうか?
大きな要因の一つは不安に対して過度の対策をすることや考え込んでしまうことなのです。
上記の人前で話すことで緊張する人の例で言えば
・繰り返し話すことをシミュレーションをする
・不安になった時の対策ばかり考える
・失敗したらどうしようとばかり考える
などです。
このような対策をすることは必ずしもダメではありません。
大勢の前で話すことを事前に練習をしたり、不安になった時や失敗した時にどう考えて行動したらよいかを知っておくことは有益で予期不安を減らすこともあります。
しかし、やりすぎると予期不安は強くなります。
不安なことを考える時間が増えることが一因。
対策を考えているということは不安について考えていますよね。
対策しても完璧に大丈夫であることを確信は持てず、対策を考えることに時間を費やし疲れ果てます。
その結果、不安なことから回避をすることになることも多いでしょう。
準備をして安心しようとしていることが逆に不安を強めてしまうのです。
以上のことから不安への過度な準備・対策は予期不安を悪化させます。
ということは、過度な準備・対策を止めることが不安を低下させることにつながるとも言えます。
このため予期不安があるときに自分がやっていることを振り返り、やめるようにするとよいのです。
例
・パニック症の人なら飛行機や電車に乗った時にどうすればよいかを繰り返し考える
・トイレがないと不安な人ならトイレの場所を事前に確認する
・不安になって耐えられなくなったらどこから逃げるか、どう対処するか繰り返し考える
自分がやっていることをリストアップしてみてください。
それを少しずつでもよいのでやめる練習をしましょう。
不安なことを考える時間が減り予期不安も少なくなりやすいです。
人によっては「準備をしないで大変なことが起こったらどうしよう」「余計不安になるのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、これまで準備をたくさんしてあなたの不安症状は改善してきたのか?と自分に問いかけてください。
おそらく改善してませんよね。
改善していないのならこれまでと違った方法を試した方が改善する確率があがりますよね。
「改善していないけど準備をしてきたから、最悪のことが起こらないですんでいるのだ」
と考えるかもしれません。
そんな人は「準備をしないと最悪のことが起こる」という考えが本当かどうかを実験するとよいです。
ほとんどの場合は最悪のことが起こらないことが理解でき、準備をしなくても何とかなることを体験できることでしょう。
先述のように「準備を全くするな」とは限りません。
過度にすることを避ければよいのです。
どこからどこまでが過度なんだ?という疑問に対して明確な基準を決めるのは難しいのですが、一つの考え方としては
「準備をすることで不安にとらわれていることが増えないか?」
「準備していることって役に立ってる?デメリットの方が多くなってない?」
「不安を回避することにつながっていないか?」
とチェックする方法があります。
例
・「不安だから発表することをたくさん練習しよう」は良いけれど、いくら練習しても自信もならず不安が強くなり完璧を求めて練習するけれど、たどりつけないで不安だけが大きくなっていく
・パニック症で高速道路の渋滞情報やサービスエリアがどこかを調べると「○○キロ先までサービスエリアがないのか。何かあったらどうしよう」と考えて高速道路を回避する
このように準備をすることで不安になりデメリットが大きく、不安から回避している結果となっているのであれば準備しすぎです。
予期不安が強い人は必ずと言っていいほど過度な準備・対策をしています。
基本的に不安対策のためにやっていることを少しずつやめるのをおすすめします。
予期不安への対策だけでは不安系の症状を全部改善することはできません。
緊張やパニックなど不安そのものへのアプローチも必要となります。
しかし、予期不安を減らすことは症状の改善の手助けとなります。
不安だからといって過度な準備や対策はしないようにしましょう。
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