浦和すずのきクリニックの鈴木です。
強迫症の治療で代表的なものの一つが認知行動療法です。
認知行動療法の中でも「曝露反応妨害法」という方法を使うことが多く、聞いたことがある人もいるでしょう。
しかし「手洗いや確認を我慢する方法」のように解釈され誤解されがちです。
誤解したまま実行してしまうと「曝露反応妨害やっているのによくならない。むしろ悪くなった」という結果になることもあります。
このため曝露反応妨害法についての基礎的なことを学習しておくことは重要なことです。
そこで今回は強迫症の曝露反応妨害法について説明します。
実践することで強迫症が改善していくはずです。
曝露反応妨害を説明する上で知ってもらいたいのは「強迫観念」と「強迫行為」と「回避」です。
強迫観念は「汚いものに触ったかも」「鍵をかけ忘れたかも」など浮かんでくる考えや衝動です。
強迫行為は手洗いや確認など、不安なことを打ち消すためにやっている行為です。
強迫行為には頭の中でやっていることもあります。
悪い考えが浮かんで来たら良い考えを思い浮かべるなどが代表例です。
強迫行為をすることで一時的な安心はあります。
しかし、その後強迫行為を何度やってもやめられなくなり生活に支障をきたします。
また強迫観念が浮かんでくるのが嫌だったり強迫行為をしてしまうことに疲れるので不安になる「きっかけ」を避けるようになります。
例えばドアノブを触ると汚いと考え手洗いをするならドアノブを触らなくなるとか。
これを「回避」と言います。
回避をしていると不安はもっと強くなり、回避の範囲が広がり生活にも支障をきたしてきます。
では、どうすればよいのか?です。
強迫観念が起こるきっかけを回避すればさらに悪化するため、回避をやめて直面していくことが必要となります。
ドアノブを回避しているならドアノブに触り続けます。
これが「曝露」です。
当然、回避をやめて直面すれば強迫観念は強くなり不安も強くなります。
強迫行為もしたくなりますが、そこで強迫行為をしないでおくのです。
するとさらに不安は上がりますが何度もやっていくうちに慣れてきて時間とともに不安は低下していきます。
これを「反応妨害」と言います。
この曝露と反応妨害を合わせたやり方を「曝露反応妨害法」と言います。
曝露反応妨害の例
・汚いと思っているものに触り、それできれいにしておきたい場所を汚し、拭かない
・外出するときにコンセントからプラグを全部抜いている人なら、プラグをつけっぱなしで確認しないで出かける
・4が縁起が悪いと避けているなら4を書いたり言ったり考えたりして、安心させるようなことはしない
症状にもよりますが自然に浮かんできた強迫観念にたいして我慢するというより、あえて自分から強迫観念が浮かんでくるようなきっかけに飛び込んでいく機会をつくることが大切です。
また強迫行為をただただ我慢して時間が経つのを待つのではなく、強迫行為をしない代わりに「何をするか?」を考えておき、実行することがおすすめです。
「不安がおさまるまで本でも読んでよー」みたいなイメージです。
このように不安なきっかけとなることをあえて実行して(ドアノブに触る)って、不安を上げるようなことをして、強迫行為(手洗いなど)はしないようにします。
自分の症状を上記の図にあてはめて考えてみください。
いきなり不安の強いことはできないことが多いと思います。
そんな人は苦手な場面をリストアップして、ハードルが低いところからやってみるとよいでしょう。
代表的な強迫の症状の曝露反応妨害のやり方の記事を下記にご紹介します。
紹介している症状以外もブログに書いているので探してみてください。
不潔強迫
確認強迫
縁起強迫
曝露反応妨害をやる上でポイントについて3つ説明します。
①何度も実行する
上記の例で言えば一回だけドアノブに触って手洗いを我慢しても平気になることはあまりないです。
よくあるのが一度だけドアノブに触り不安が下がるのをひたすらまったけど不安が残っているし苦手感が残ったまま、というもの。
これではなかなか不安には慣れないです。
ジェットコースターが苦手な人が、一度ジェットコースターに乗ったからと言って苦手を克服できないのと一緒。
ジェットコースター克服のためには何度も何度も連続で乗る必要がありますよね。
それと同じで何度も何日もドアノブに触るようにしましょう。
飽きるくらいまでやるとよいです。
このためには「強迫観念が出てきた時に強迫行為を我慢する」みたないことをするだけでは足りないことが多いです。
計画的に不安なことを実行する必要があります。
例
・不潔だと思っているものに意図的に触る
・確認したくなるような場面に何度も行く
・不吉なものをあえて思い浮かべる
単に「強迫行為を我慢する」ではなく、自分から不安な場面に意図的に飛び込む、みたいなイメージでやるようにしましょう。
②頭の中の強迫行為をしない
「このドアノブはキレイだから大丈夫」と頭の中で安心させながらドアノブに触ってもダメです。
頭の中で安心させるのも強迫行為だから。
曝露反応妨害は不安を「上げて」慣らす方法みたいなものです。
それなのに頭の中で安心材料を探し不安を下げるようなことをするのは逆効果となります。
ついつい頭の中で安心しようとするクセのある人は「はいはい、汚いドアノブだね~」みたいに不安な考えを否定するのではなく肯定していくのがおすすめです。
頭の中の強迫についてもっと知りたい方はこちら
【強迫症】知らないとマズイ!頭の中でやってしまう強迫行為とその対処法
③苦手なものを回避をしない
例えばドアノブに触って手洗いは我慢しているけれどその手でどこも触らない、風呂など手洗いの前だけ実行する、など苦手なところを微妙に避けていると改善はしません。
「汚い手できれいなところに触っていないから大丈夫」「風呂で手洗いすればよいから触っても大丈夫」など苦手なことを避けて「○○だから大丈夫」としていると不安には慣れないです。
苦手なことは避けないようにしましょう。
曝露反応妨害は強迫症にとって非常に有効な方法の一つです。
難しいと感じるかもしれませんが実行すれば多くの人が改善します。
強迫症で悩んでいる人は是非ためしてみてください。
一人ではうまくいかないって方はカウンセリングでご相談ください。