浦和すずのきクリニックの鈴木です。
パニック症の人で逃げられない場所とか助けが求められない場所、パニック発作が起こったら困る場所が怖いと思っている人はいませんか?
「広場恐怖症」という症状です。
広場恐怖症は薬を飲んでいるだけではなかなか克服できません。
克服するために練習が必要ですが、練習の方法について知らない人もいると思います。
知っていてもあまり効果的な方法でやっていない人が多い印象です。
苦手な状況に挑戦してもなかなか改善でていないのではありませんか?
これは広場恐怖症の改善のコツを知らないためです。
下手をすると余計怖くなります。
そこで今回はパニック症の人が広場恐怖症を克服するための方法とコツについて解説します。
実践することで不安に囚われない自由な生活に一歩近づけます。
広場恐怖症でよくある代表的な苦手な状況は以下です。
・交通機関(電車、バス、飛行機など)
・広い場所(橋、駐車場など)
・囲まれた場所(映画館、狭い店など)
・列に並ぶ、多くの人がいる場所
・自宅に一人でいる
このような場所にいるとドキドキ、息苦しさが出てきて「逃げられない」「死んでしまうかも」など考えます。
不安なのでそのような状況を避けるか、または誰かと一緒にいようとして安心しようとします。
しかし、不安は避けると怖くなる性質があります。
避ける場所がどんどん広がり、生活に支障をきたすようになります。
広場恐怖症は苦手な場所を避けると怖くなるので、避けないで挑戦することが克服につながります。
「電車にのったら不安が強くなって大変なことになるじゃないか?」と考えると思うのですが、そんなことはありません。
確かに電車に乗ったら不安は強くなります。息苦しさ、ドキドキ、汗など症状が出てくるかもしれません。
しかし、時間が経つと不安は必ず減ってくるのです。
これを経験すると「電車に乗って息苦しさがあっても時間が経てば収まる」と考えられるようになります。
注意してほしいのは「電車に乗ってもドキドキしなかった」など症状がなかったことを成功にしないようにしてください。
症状が出ないことを成功にすると「症状が出たら失敗」となり、症状が出ることにおびえ続けます。
仮に電車に乗れるようになっても、調子が悪くなるとすぐに乗れなくなるパターンになりやすいです。
パニック発作の時の症状は不快ですが危険なものではないのです。
危険ではないものにおびえ続けていることが問題。
先述のように時間が経てば100%何もしなくてもおさまります。
だから「症状が出たけれどやり過ごすことができた(目的を達成できた)」ということを成功や進歩とすることが大切です。
もちろん一度やっただけでは克服できません。
何度もやってみると慣れて不安にはなりにくくなり、最初に挑戦してきた時よりも楽に電車に乗れるようになってきます。
「いきなり電車に乗るなんて不安で出来ない」と思うかもしれません。
そんな人は小さなステップに分けてみるとよいでしょう。
まずは不安な状況をリストアップしてみましょう。
その怖さを0(全く怖くない)~100(ものすごく怖い)で数値化してみます。
数値についてはざっくりでよいです。
例
飛行機100
新幹線80
地下鉄60
普通電車40
映画館30
美容院20
一人で散歩10
また、同じ項目でも条件が違えば不安の強さも変わるかもしれません。
電車に乗るにしても
・空いているか混んでいるか
・一人か家族と一緒か知らない人と一緒か
・誰かといったときは同じ車両か
・行きか帰りか
など、あるでしょう。
電車にさえたどりつかない状態であれば
・改札までいく
・ホームまでいく
というのもありかもしれません。
この中から数値の低いもを選んで挑戦していくとやりやすいです。
「数値低いやつはそんなに怖くない」というならもう少し上のモノでもよいです。
不安に慣らす練習なので、ある程度不安になる必要があります。
先述のように「症状や不安があっても大丈夫」を目指しましょう。
ただ最初は90%くらいの確率で成功しそうなものを選ぶのをお勧めします。
最初にうまくいく経験をすると、継続してがんばろうとする意欲がわきやすいです。
どのあたりから挑戦するかを決めたら、具体的に目標を立てましょう。
ここはとっても大事です!
例
・○○駅から××駅まで、夫と一緒に同じ車両に乗って行く
・スマホを持たず一人で自宅から30分先になるショッピングセンターまで歩いていく
など。
目標を立てるにあたって重要なことの一つは「不安が収まる時間を考えて設定する」ということ。
「電車に一駅だけ3分乗る」はあまりおすすめしません。
一駅3分程度では不安が収まらないからです。
もちろん一駅ずつ延ばしていくという方法が必ずしもダメではありません。
しかし、パニック発作のピークは10分前後といわれています。
一駅など数分ではパニック発作の不安が上がっている最中である可能性が高いです。
そのタイミングで電車から降りると「不安が下がる」という経験はできず、むしろ不安が強くなる可能性もあります。
「電車から降りたから不安が下がる」と学習してしまい「降りなかったら不安は下がらない」「各駅停車の電車しか乗れない」ということになりかねません。
これは多くのパニック症の人が思い当たるところがあるのではありませんか?
場面にもよりますが不安な状況には最低でも15分くらい、できれば1時間くらいは見てもらった方がよいです。
不安がゼロまでいかなくてもよいので、ある程度不安が自然に収まるのを経験できる時間設定が重要。
そうすることで「不安があっても時間が経てば自然におさまる」という経験ができて克服しやすくなります。
不安が収まるまでの間何をしていたらよいか?についてはこちらの記事を参考にしてください。
理想的には無理に何か対処しようというより、不安を感じつつ何かしてたら自然に収まってきたというのがよいかもしません。
適切に何度も挑戦しているのに不安に慣れない時は「安全行動」をしていないかチェックしてください。
安全行動は不安な場面で安心するためにやっている行動です。
例
・電車でドアの近くいる
・電車では必ず座る
・水、フリスク、頓服を持ち歩くか使用する
・電車でチラシをみる、スマホで気をそらそうとする
・映画館などで出口の近くにいる
・美容院を事前予約せず当日予約にする
これらの行動をやっているとせっかく不安なことに挑戦してもなかなか不安に慣れないです。
このため少しずつやめていく必要があります。
安全行動は挑戦しはじめて間もない時にやるのは必ずしもダメではありません。
電車に乗るときにドアの近くなら乗れるというのであればそこからスタートしてもよいでしょう。
しかしそれが続くと「ドアの近くでなければダメだったかも」となり、「不安があっても大丈夫」「発作は危険ではない」という学習ができず、ある程度は改善しても不安を克服できません。
安全行動は泳げない人にとっての浮き輪みたいなもの。
最初はそこからスタートしても浮き輪を外せなければ水への怖さも下がらないし自由に泳げるようにはなりませんよね。
挑戦しているのに不安に慣れないと思ったら安全行動をしていないかチェックしてみてください。
広場恐怖症は練習していけば改善しやすいです。
勇気が必要ですが、地道に頑張りましょう。
うまくいかない、やり方がわからいときは認知行動療法の専門家に相談することをおすすめします。
カウンセリング・認知行動療法ご希望の方は浦和すずのきクリニックのホームページをご覧ください。 他の病院に通院中の方、どこにも通院されていない方でもカウンセリングは受けられます。