浦和すずのきクリニックの鈴木です。
このような症状でお困りではありませんか?
・歩いている時に「誰かにぶつかってケガをさせたのでは」と考える。
・車を運転している時に「誰かひいてしまったのでは」と考える。
・包丁をにぎっていると「誰かを刺してしまうのでは」と考える。
強迫症という病気の中でも加害恐怖と言われているものです。
「他人を傷つけた」「他人を殺した」など、人に迷惑をかけてしまうことを恐れます。
不安なことが起こらないように何度も確認したり、不安な場面を避けて日常生活に支障をきたすようになります。
このような症状があると「自分は何もしていないから大丈夫」と安心しようとしていませんか?
実は、それがなかなか治らない原因の一つ。
やみくもにやっても改善しないどころか悪化していくだけ。
かといって、どのように克服すればよいか知らないという人も多いでしょう。
そこで今回は、加害恐怖をどのように克服していけばよいかを説明します。
実践することで、加害恐怖が軽くなり生活が楽になります。
なぜ加害恐怖が悪化しているのか?なぜ何度確認してもスッキリしないのか?
この疑問の答えを知るためには「強迫観念」と「強迫行為」について理解しておくことが必要です。
加害恐怖は「他人に何らかの危害を加えたのではないか?」と不安になります。
この「危害を加えたのではないか?」という考えを「強迫観念」と言います。
強迫観念の例
・道路を歩いていて「誰かを転ばしてケガをさせた」
・車で「誰かを引いてしまった」
・電車で「痴漢をしてしまった」
強迫観念が出るくると不安になります。
そうすると安心するための行動をします。
これを「強迫行為」と言います。
強迫行為の例
・誰かを転ばしてケガをさせたのでは?(強迫観念)→戻って確認(強迫行為)
・誰かを車でひいたのでは?(強迫観念)→戻って確認、警察に確認(強迫行為)
・刃物で誰かを傷つけてしまったのでは?(強迫観念)→刃物だけでなく、武器になりそうなものを持っていないか確認(強迫行為)
強迫行為には「見て確認」のような「目に見える」ものと、頭の中で「何もしていなから大丈夫」と言い聞かて安心させるなど「目に見えない」ものがあります。
強迫行為をすると、一時的に安心するかもしれません。
ところが最初は一回の確認で済んでいたものが、二回、三回と増えてきます。
頭の中で「大丈夫」と確認したり、周囲に「大丈夫だよ」といってもらったりしても安心できません。
やればやるほど「きちんと確認できていないのでは」と不安になります。
そうするとさらに確認が増えていくのです。
強迫行為は「麻薬」に例えられます。
「今回だけ」「あと一回だけ」と強迫行為をやりたくなりますが、一度やりだすとなかなかやめられません。
加害恐怖を克服するには「人にケガをさせたのでは?」という不安に慣らすことが必要です。
例えば、これまでは「ケガをさせたのでは」と不安になったら確認をして安心させてきましたよね。
それが麻薬のようにやめられなくなっているので、確認をやめなくてはいけません。
確認をやめれば不安になりますが、時間とともに不安は薄らいできます。
繰り返していくと「ケガをさせたのでは」と考えても、流せるようになり、結果的にあまり考えなくなってきます。
この方法は「曝露反応妨害法」と呼ばれている方法です。
「曝露」とは「不安なことにさらされること」。
「反応妨害」とは「安心させる行為をしないこと」。
この組み合わせが曝露反応妨害です。
曝露反応妨害は次に説明する2つのステップをふんで実践しましょう。
曝露反応妨害の手順を説明します。
まずは強迫観念と強迫行為を挙げてみましょう。
強迫観念はわかりやすいかもしれませんが、強迫行為はわかりにくいです。
以下が強迫行為の例なので参考にしてください。
強迫観念が「歩いて誰かにぶつかったのでは?」の場合
・戻って確認する
・道の端を歩く
・大きなバッグを持ち歩かない
・手をふらない
・人がきたらよける
・家族に「大丈夫だよね」と聞く
強迫観念が「車で誰かにぶつかったのではないか?」の場合
・戻って確認
・ぶつかったらわかるように窓を開けて音楽は流さない
・何度もルームミラーとサイドミラーを確認
・法定速度よりもはるかにゆっくりしたスピードでしか走らない
・事故がなかったか警察に確認
強迫観念が「刃物で誰かを傷つけたのではないか?」の場合
・刃物系のモノが持ち物に入っていないか外出前に確認
・眉用のはさみや鼻毛カッターなども持ち歩かない、持ち歩く時は厳重に包む
・包丁を使わず料理をしない
強迫観念と強迫行為をあげることができたら以下の2点をします。
・あえて強迫観念が強くなるような不安なことをする
・強迫行為はしない
「あえて強迫観念が強くなるようなこと」については、強迫行為でやっていることとは違うことをすればよいです。
例えば道を歩くときに端を歩いていたのなら道の真ん中を歩くとか。
具体的な例を挙げます。
誰かにぶつかってケガをさせたのでは?(強迫観念)と考えて確認やバッグをもたず手を振らないで歩くこと(強迫行為)をしていた場合
↓
大きなバッグを持って大きく手を振って人ごみを歩き、確認しない
車で誰かを引いたのでは?(強迫観念)と考えて、戻ったり窓を開けていた場合
↓
窓を閉めて音楽を聴きながら運転して不安になっても戻らない
刃物で誰かを傷つけたのでは?(強迫観念)と考えて、料理をしていなかった場合
↓
誰かがいる前で包丁を使って料理をする
最初は不安が強くなりますが、確認など安心しようとせずに過ごしていると、不安は薄らいできます。
しかし、何度も実践することで、強迫行為をしなくても楽にやり過ごせるようになってきます。
不安な時に「何も怖いことは起こっていないから大丈夫」と安心させるのは強迫行為となるので、やってはいけません。
かといって「考えない」ことは人間できません。
ではどうしていけばよいかというと、強迫観念を肯定していけばよいです。
「誰かを転ばせてケガをさせたのでは?」→「誰かを転ばせてケガをさせた」
こうすることで不安を強くさせて不安に慣らす効果があります。
また「誰もケガをさせていない」と頭で安心させる行為も邪魔できます。
「確認する回数が多いのだから回数を減らすそう」とする方法をとりたくなるかもしれません。
これまでだったら「10回はやっていのを8回にしよう」とか。
絶対ダメな方法というわけではなく、強迫の人はこの方法をやりがる人が多いですが、多くの場合失敗します。
なぜならば一回確認したら止められなくなるのが強迫だから。
麻薬と一緒です。
「ちょっとだけ麻薬やって、少しずつ減らしていこう」と言っている麻薬中毒の人がいたら「それは難しいって!」と止めますよね。
うまくいかないどころか、後で我慢した分を取り返すかのように何度も確認してしまうでしょう。
そうすると「確認を我慢すると悪化する」と考えてしまい、なかなかすすみません。
回数を減らせたとしても、途中で行き詰ることがほとんど。
どんな低いハードルでもよいので確認せずに挑戦するよう心がけましょう。
加害強迫で周囲を巻き込むことがあります。
例えば車に乗っている時に「さっき誰も車でひいてなかったよね」と確認してしまいたくなるかもしれません。
そこで周囲から「誰もひいていないから大丈夫だよ」と答えてもらうと、一時的な安心をするかもしれませんが、強迫は悪化します。
ですから周囲に確認しようとしてはいけません。
周囲の方にも強迫に対して安心させる対応をしないように教えておくと良いです
例えば確認された時の具体的な対応については
・「強迫だからその質問には答えられないよ」と断る
・「もうさっき車でひいてしまってたね」とあえて不安をあおることをする
などがあります。
前者のようにやんわりと断るように周囲に伝えることが無難でしょう。
特に家族の方は強迫についての知識を持つようにしましょう。
説明してきた方法は繰り返し挑戦していくことが必要です。
「怖くなったら我慢する」ではうまくいきません。
嫌なことはやりたくないので、なかなか挑戦が続かないでしょう。
「あえて怖いことをやる」を計画してやりましょう。
毎日やるのがおススメです。
2週間以上やらないと練習効果はなくなってくると言われています。
最初はやっても怖くて仕方ないですし、継続するのが難しいと感じるかもしれません。
しかし、あきらめずに何度もやりましょう。
うまくいかないときは、相談しに来てくださいね。
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