浦和すずのきクリニック、臨床心理士の鈴木です。
心の病気の方の家族の相談を受けることがあります。
よく聞かれるのは言い争いが多くなることです。
「あなたのここが問題だ」
「ちゃんと治療しなさい」
など言ってもうまくいかないものです。
どんどん関係が悪くなっていき、症状も悪化していきます。
これはコミュニケーションの方法がマズイことが一因です。
家族もそうですが、心の病気の本人も同じように関係がまずくなるようなコミュニケーションをとっているものです。
この記事では家族問題が起こったときに、どのようなコミュニケーションをとっていけばよいのか?どういうところに気を付けていったらよいのか?について説明します。
紹介する方法はアルコールなど依存症の家族トレーニングに使われているものですが、依存症関係なく、実践することで問題がスムーズに話し合われやすくなります。
コミュニケーションの技術として6つの方法お伝えします。
「I」とは「私」の意味でのIです。私を主語にした言い方で気持ちを伝えると、マイルドな表現になります。
「私は○○だと××な気持ちになる」といった具合に。
逆は「YOUメッセージ」で「あなた」を主語にした言い方です。相手は責めるような表現になりやすいです。
比較してみましょう。
YOUメッセージ
・どうして(あなたは)何も家事を手伝ってくれないの?
・パチンコばかりして!家計のこと(あなたは)全然考えていよね
Iメッセージ
・(私は)リビングの掃除をしてもらえると助かる
・家計のことを考えると(私は)不安になります。話会いたいのだけれど。
私を主語にした文章にしていくことでマイルドな表現になりましたよね。
問題を話す時は、たまりにたまっていることの方が多いので、ついつい伝えることが長くなります。
しかし、長々と説明すると、何を言いたいかわからなくなりますし、話が余計な方向にいって、言い争いになりやすいです。
このため簡単に説明するようにしましょう。
話が長くて何を伝えたいかわからない例
今何時だと思っているの?遅くなる時は連絡くれるっていったじゃない。前も同じことあったよね。何回言ったらわかるの?ほんと自分勝手だよね。私のことなんてどうでもいいとおもっているんでしょ。なんかいいなさいよ!
簡単に短く気持ちを伝えた例
遅くなる時は連絡くれないと心配になるんだ。どうやったら連絡できそうか話したいんだけど。
ここでのポイントは自分が言いたいことは何か?をまず考えて、それをシンプルにIメッセージを使って伝えることです。
上記では「連絡できそうか話し合いたい」が主張でしたが、自分が伝えたいことに置き換えて考えてください。
伝えたいことが曖昧だと結局相手に伝わらず、イライラしてしまう結果となります。
このため何をしてほしいのか、具体的な行動まで落として伝えるようにしましょう。
いつ、どこで、何を、どれくらいやればよいのか具体的に考え、Iメッセージで伝えて下さい。
曖昧な伝え方の例
いつもゴロゴロしてばかりいて!たまには掃除手伝ってよ!
具体手に行動まで伝えた例
毎週日曜日の午前中、リビングに掃除機をかけてくれると助かるし、早くあなたとショッピング楽しめるからうれしい。
ついつい「こうしてほしくない!」と表現してしまいがち。
この表現の仕方はネガティブな印象を与えるんです。
何か伝えたい時は「してほしくないこと」ではなく「してほしいこと」を話すことで、友好的な雰囲気が保たれやすいし、相手は何をすればよいのかわかります。
「○○することで、××(良いこと)が起こるよ」がやりやすいです。
「××」が悪いことだとネガティブな表現になります。
ネガティブ・してほしくないことを伝えた例
いつもお酒ばっかり飲んでるあなたをみるのってホント嫌。
ポジティブ・してほしいことを伝えた例
シラフの時にあなたと一緒にいると、とっても楽しい
何か問題が起こると「全部あなたが悪い」となりがち。
そうなると相手はイラっときて、ケンカになります。
この時「問題が起きた責任の一部分は自分にある」とすることで、相手は話を聞いてくれやすくなります。
「自分は全然悪くないのに何でそんなことしなきゃいけないの?」「相手が図にのってしまう」とストレスがたまるかもしれません。
しかし、長い目で見た時コミュニケーションが良好になりストレスは少なくなります。
全部相手の責任にした例
この書類書いておいてっていったじゃない!何で書いてないの?昨日いったでしょ!
部分的に自分の責任にして気持ちを伝えた例
書類わすれちゃったんだね。今日の朝、もう一度私が言っておけばよかったね
自分には理解できないことだけれど「相手からすればそういう気持ちになるのはもっともだ」と伝えることです。
自分の感覚や常識はわきに置いて、相手の世界を受け入れるようにします。
これは結構難しいと思うことが多いようです。
自分の立場から問題点を理解した例
どうして時間があるとパチンコばっかりやるの?もっと趣味とかやればいいじゃない。もっと楽しいこといっぱいあるよ
相手の立場から問題点を理解した例
パチンコにのめりこんでいたから、何すればいいかわからないだね。最初はむずかしいよね
これらの方法は何度も練習が必要です。
何か話し合う時は以上の6つのことができているかどうか、検討してからにするといいです。
家族のコミュニケーションを変えるだけで、心の病気は改善する方向へ一歩すすみます。
依存症に限らず、家族のことで困ったことがある時は相談に来てくださいね。
本人がこなくても相談受けられますよ。
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