あなたは洗脳されているかも。厳しいことを体験しても心は強くなりません

浦和すずのきクリニック、臨床心理士の鈴木です。

会社の新人研修でやたらと厳しい研修するところありますよね。
マラソンしたり、大声出させたり、自己啓発的なことをしたり。

とってもか弱い私には耐えられそうもありません。
すぐに逃げ出しますね。

学校なんかでも、新入生に厳しいことをさせることがあります。
知人から聞いた話では、先輩の話を聞くときはつま先立ちをする、とか。
体育会系なんかそうですよね。

冷静に考える意味があるとは思えません。
厳しいことにをやったって、精神的に強くなるわけじゃないんですよ。
このあたり誤解している人が多いんじゃないでしょうか。
アスリートや軍隊のように厳しくやっている人が心の病気になりにくいかといえばそんなわけがありません。
むしろ、結構悩んでいる人が多いといわれているくらいです。

しかし「あれはあれで役に立ってるんだ」「あれで鍛えられた」「そんなもんだろう」って思っている大人は多いハズ。
とってもおかしなことなんですが、自分では気づいていません。
なぜなら心理的なカラクリがあるから。

シゴかれると「あれって役に立った」と考えるようになる

人は苦労して得たものに価値を置く心理が働くのです。
これも心理学の研究なんかでいわれていること。
モノでも地位でも組織にはいることでも。
例えば、欲しいものを簡単に手に入れた人と、いろんなところを探し回って苦労して手に入れた人では、苦労して手に入れた人の方がモノに価値をおきそうなのは予想つきますよね。

同じように部活、会社、組織で、最初にいじめのようなきついこと、大変なことを経験して仲間になると「その集団っていいな」「あのしごきで自分は鍛えられた」って思ってしまうのです。
不思議ですよね。

会社なんかで新人研修の時にしごきみたいなのを行うのは、その会社を魅力的に感じさせようとする効果があります(意図としているかわかりませんが)。
洗脳みたいなもんです。

それに耐え抜いた人は、単なる「しごき」「いじめ」みたいなものでも「今自分があるのは、あの時鍛えられたからだ」と、しごきを「価値あるもの」と考え、会社への忠誠心が高まります。
脱落した人は弱い人と見下し、それに耐え抜いた自分は強くなったと錯覚。
そして新しく入ってくる人にも同じようなことをさせるのです。
軍隊なんかがその辺利用しているのかな。

立たせたり、こきつかったり、殴ったり、しごいたり。
優しい人であっても、会社や部活ではそのようになります。

こういうのを一般的にイジメっていうのですが・・・。
問題なのはイジメている意識が当人にないのです。
「新人にはこうするんだ。自分は鍛えてやっているんだ。自分もそうして強くなったし。相手が弱いだけ」って思っています。
会社でパワハラがなくならないことの一因かもしれません。

新人に対して苦痛をあたえるのが「精神的に鍛えること」と思っていませんか?
「理不尽な苦労をしたから今の自分がある。後輩にもそのようなことを経験させるべきだ」と考えていませんか?

目を覚ましましょう。
単なるイジメです。
心理的なカラクリによって「精神的に強くなるんだ」と思い込んでいるだけ。

あと、いじめのような研修とか教育で集団に耐えきれず、適応できなかったって人いませんか?
「世の中そんなもので、自分が弱いだけじゃないのか?」
「これに耐えられないとどこにいってもダメなのでは」
「ここを辞めたって、こんな風にきついし、どこもいくとかないし」
と思いがち。
それで我慢してウツになる。
ちょっと洗脳されかかってますよ~!弱いとかそういうわけじゃないのです!
組織がおかしいだけです。
みんな洗脳されてるな~、くらいに思った方がいいですよ。
ウツになる前に、さっさと環境を変えることをおすすめします。

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