うつと不安と原因の錯覚

臨床心理士の鈴木です。

「パニックになるんじゃないかと不安だから電車に乗れない」

これは不安が原因で電車に乗れない、としています。
一見何もおかしくないように見えるでしょう。

ところが・・・今電車に乗らなかったら、あなたは一生刑務所の中ですごさなくてはいけないとしたらどうでしょうか?

乗ってしまいますよね。

乗ってしまうということは「不安でも電車に乗れる」と言うことです。

これは極端な例ですが、要は状況が違えば電車に乗れるのです。
ですから不安は電車に乗れない原因とはなりません。

では何が原因か?
幼少時の育て方?マイナス思考?歪んだ思考?前世のせい?
根本的な原因があるはずだと思ってませんか?
そんな風に考えて不安がなくなりました?電車に乗れました?

このように体験の一部を絶対の原因と見る現象を「原因の錯覚」と言います。

人間は「思考が行動の原因」と考える傾向があります。
だから「不安が原因」と捉えると、必死に不安を取り除こう、思考を変えようと試みるのです。

しかし、不安も思考内容も「考えた」だけでは変わりません。
合理的に考えようが、色んな可能性を考えようが、不安は不安なんです。
「電車に乗っても倒れないことは頭でわかってる。だけど不安で電車に乗れないんです」
「寝る前になると色んな嫌なことが浮かんでくる。忘れようとしても忘れらない」
という結果になります。

考えて下さい。
不安が原因ではないとしたら、不安を取り除こうとするという行為は妥当でしょうか?
不安という実態のないものと戦うことは、底なし沼であがくようなものです。
もっと不安になり、疲れ果ててしまいます。

それよりも「不安」という「言葉」のトリックに気づく必要があります。
長い間うつや不安で悩んでいる方は、解決方法の方向性が間違っているのです。
戦ったり、避けたり、克服しようとする必要のないものかもしれませんよ。

そのトリックに気づき、底なし沼から出て「うつ」「不安」に囚われない人生を見つけてみませんか?

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