臨床心理士の鈴木です。
こんな問題について良く耳にします。
「自分を抑えて本当のことを言えない」
よく耳にするアドバイスとして聞くのが、「あなたは人の目を気にして自分を抑えているんですね」「過去の親子関係で愛された経験がないのですね、親の目を気にしてきたことが原因ですよ」「人のことは気にせず、本当に言いたいことを言えるようになりましょう」という答えになってたりする。
このような答えを聞くと「私もそう!」「そういえば親にあの時こんな扱いを受けた、あの時つらかった」と、何となく自分に当てはまり、わかってもらえたような気がしてしまいがちですが・・・。
このパターンとしては両親を責め、その両親がさらに高齢者となった自分の両親を責める、「世代間伝達」などどいうもっともらしい理屈をはりつけているものです。
一時はわかったつもりになって、楽になることもありますが・・・。
恨みははれましたか?現実は変わりましたか?言いたいことは言えるようになりましたか?問題は解決されましたか?
まず一ついえることは、幼児期の体験が現在の精神疾患の原因であることはありません。
日本ではこの理屈が流行しており、一部のカウンセラーがそのようなことをいっていることがありますが、根拠としては非常に乏しい理屈です。
もう一つ、現実の場面で自分を抑えず言いたいことを言っていたら、だいたい孤立していきます。
それに相手が自分の要求に応えてくれるとは限りません。
人の目を気にすることは決して悪いこととは限らず、人の目を気にするからこそ、人間関係や社会が成り立っている部分があります。
もちろん言いたいことをいえるようになることにより、解決してくこともあります。
当然ながら主張することが問題解決に結びつく場合です。
その時は、場所、タイミング、言い方を工夫、練習し、自分の言いたいことを言えるようになる必要があります。
これにはコツがありますので、カウンセラーと相談しながら進めていくと良いと思います。
要はバランスが大事だというだけです。
そして自己主張できることが重要なのではなく、どうすれば問題解決に向かうか、どうすれば自分がもっと充実した人生を送れるかが重要なのです。
「自分の言いたいことを言って、自分が抑えていることを解放する」=問題解決とは限らないのです。
自己主張は目的ではなく手段にすぎません。
「自己主張できない抑圧の理屈」から離れて、解決に一歩踏み出してみましょう。
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