自由意思

近年の脳科学における進歩には目覚ましいものがあります。
この進歩から人類は大きな恩恵を得ていることは間違いないのですが、同時に大きな謎を突き付けられてもいるようです。
その一つが、ベンジャミン・リベットの行った実験です。
この実験は、被検者に、彼らの好きなタイミングで指を動かしてもらう、というものです。
すると、彼らが報告した、指を動かそうと思ったタイミングよりも、0.5秒も前に、脳波の動きがみられることがわかりました。
つまり、この実験で突き付けられた謎とは、人が自由意思を持つ前に、すでに脳は活動しているということです。人は自分で意思を持ったと感じていますが、それは実は脳によって規定されている、と言い換えてもいいでしょう。
ではこの、自由意思の前に現れる脳の活動は、なにに引き起こされたものなのでしょうか。どうもここには、合理的な説明はつけられそうもありません。
「自由意思」のような、純粋に心に起こる現象と、物理的な脳との関係を考えていくと、リベットの実験のような、人間の思考の限界を超えるような現象にどうしても突き当たります。
心と脳とが関係していることは明らかなので、心理学は脳科学で得られた知見を無視するわけにはいきません。それでもやはり、こうした実験を目の当たりにすると、心の世界の法則は、物理的な世界の法則だけでは説明できないのではないか、と思わざるを得ないのです。