心の傷を癒すには

先日、イギリスのウィリアム王子がインタビューで、メンタルヘルスの大切さを訴えたそうです。ウィリアム王子に限らず、イギリス王室では、ヘンリー王子やキャサリン妃もメンタルヘルスのチャリティーキャンペーンに参加したりしていて、イギリスでは日本よりもメンタルヘルスに真剣に取り組もうとする姿勢があるのかもしれません。

さて、ウィリアム王子はこのインタビューのなかで、「心の傷を語ることの重要性」を指摘しています。王子自身、このことによって母であるダイアナ妃の死を乗り越えることができたといいます。

心の傷によって引き起こされるものの代表的なものに、PTSDと解離性障害があります。

PTSDは、歴史的にはベトナム戦争帰還兵が、①過覚醒による不眠、②戦争を思い出させるような場所や物の回避、③戦争体験のフラッシュバック、といった症状を示したことから注目されるようになったもので、過去の心の傷をきっかけとして発症します。

解離性障害は、現実感がなくなったり、ある特定の時期の記憶が想起不能になったり、あるいは人格がその時々で入れ替わるいわゆる多重人格になったりします。解離性障害の場合には、心の傷が明確でなくても上記のような症状があれば解離性障害と診断されますが、それでも解離性障害の背後には、多くの場合心の傷が隠されています。

ウィリアム王子のインタビューでは、心の傷を語ることが重要とされていましたが、当然、傷を語ればそれで治るというものではありません。語るためには、語っても安全だと思わせるような、信頼感に満たされた場所が必要です。さもなければ、傷を語ることによって、さらに傷をえぐられるようなことになりかねません。

PTSDや解離性障害において、「心の傷を語ることの重要性」とは、「心の傷を安心して語れる場所の重要性」と言い換えてもいいかもしれません。この、安全な場所さえあれば、語るか語らないかはむしろあまり重要ではないのだろうと思います。私も心理療法を実践するものとして、安心できる場所を提供できれば、と日々思っています。